夢置き場

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夢置き場

                                   作:海部守

時:現代のような時

所:日本のような場所

登場人物

・ユミズ :サラリーマン。

・小説家 :探検家でもある小説家。

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   どこからか電車の走行音が聞こえてくる。

   こじんまりとした部屋のような空間にある椅子にユミズが腰掛けている。

   そこは電車の中のようだ。

   どうやら彼は眠っているようだ。

   隣の椅子には誰も座っていない。

   それどころかその車両には誰も乗っていない。

   電車が一度大きく揺れて、ユミズは目を覚ます。

ユミズ あぁ、いつの間にか寝てしまったんだな。今はどの辺りだろう。

   ユミズ後ろを振り返る。

   窓の外は星空だった。

ユミズ あぁ、これは夢だな。見たことがある。そう、もう何度も見たことがある夢だ。

   もうじきあっち側から男が一人やってきて、

   小説家がやってくる。

ユミズ ここ、空いてますか? と私に聞くんだ。

小説家 ここ、空いてますか?

ユミズ そう。彼は私が答えるまでじっと立ったまま待っているわけだ。いつもならここ

   で空いてますよ。と答えるんだが、今日は夢だとわかっているんで、意地悪をして

   みよう。空いてません。

小説か そうですか。

ユミズ はい。

   小説家、残念そうに空いている椅子を見ながらユミズの膝の上に座る。

ユミズ なんだこれは。

小説家 なんだこれは。

ユミズ ちょっと、降りてくださいよ。

   小説家、ユミズから離れる。

小説家 あ、これは失礼。私はいつも椅子に座ることになっていたものだから、つい。

ユミズ つい、で人の上に座りますか?

   小説家、空いている椅子を指差す。

小説家 ここ、空いてますか?

ユミズ 空いてません。

小説家 そうですか。

ユミズ はい。

   小説家、残念そうに空いている椅子を見ながらユミズの膝の上に座る。

ユミズ だからなんですか。

   小説家、離れる。

小説家 おかしいなぁ。

ユミズ おかしいのはあなたです。

小説家 おかしいのは私ですか?

ユミズ はい。おかしいのはあなたです。

小説家 ははは、おかしな人だ。

ユミズ おかしいのはあなたです。

小説家 おかしいのは私ですか?

ユミズ おかしな人だなぁ。

小説家 それはあなたが自分のことをご存じないからですよ。

ユミズ 知ってますよ。自分のことくらい。

小説家 いいえ、ご存じない。

ユミズ 知っています。

小説家 では、私にあなたのことを話してください。

ユミズ 嫌ですよ。

小説家 なぜですか?

ユミズ だって、あなたは見ず知らずの人ですから。

小説家 誰でも最初は見ず知らずですよ。

ユミズ それは屁理屈です。

   小説家、空いている椅子を指差す。

小説家 ここ、空いてますか?

ユミズ 空いてません。

小説家 そうですか。

ユミズ はい。

   小説家空いている椅子に座る。

ユミズ ちょっとぉ、

小説家 どうしました?

ユミズ 別に。

小説家 ここに来るまでの間に鳥を見たんですよ。

ユミズ あ、この展開知ってる。強引に戻ってきたな。彼は白い鳥が西の空に消えていく

   のを見て明日が雨だと言うんだ。

小説家 そうですよ。明日は雨です。

ユミズ あれ?

小説家 どうしました?

ユミズ 白い鳥の話はしないんですか?

小説家 あなたがしてくれたじゃないですか。

ユミズ まあ、そうなんですけどね。なんか変だなぁ

小説家 白い鳥が西の空に消えていったんですよ。きっと、明日は雨ですよ。

ユミズ 戻った。はい。知ってます。あなたがさっきそう言ったじゃないですか。

小説家 言ってませんよ。言ったのはあなたです。

ユミズ もうなんだかよくわからないなぁ。

   ユミズ、席を立つ。

小説家 どこに行かれるんですか?

ユミズ 降ります。

小説家 座ったらどうですか?

ユミズ お断りします。

小説家 この電車、しばらく止まりませんよ。

   ユミズ、座る。

小説家 今、夢を探して移動している最中ですから。

ユミズ え?

小説家 思い出した。あなたは3年前に、片思いの女性に思いを打ち明けたら実はその人

   は双子でどっちも好きになってしまったけどどちらからも好かれてしまって、とっ

   ても困ったことになったという夢を見ていたあの人だ。

ユミズ はい?

小説家 お忘れですか?

ユミズ お忘れですか? って、何でそんなことを知ってるんですか。ああ、そうだ。今、

   言われるまで忘れてましたよ。あ、そっか、ここは夢だったんだ。だからあなたが

   知っていても全然問題がないわけだ。

小説家 あまりにひどい展開だったんで捨ててしまおうかと思ったんですけど、主人公の

   性別を入れ替えることでベストセラーに生まれかえらせることが出来ました。どう

   もありがとう。

ユミズ はい?

小説家 申し遅れました。私、小説家をしている者です。小説家と申します。

ユミズ この展開は知らないな。それも小説家の名前が小説家だなんてなんのひねりもない。

小説家 そうでしょうね。今は夢であって夢ではないわけですから。

ユミズ 言っている意味がよくわかりません。これは夢ですよ。あなたは私の夢の登場人

   物です。

小説家 いいえ。私は探検家なんです。

ユミズ さっきは小説家だって。

小説家 そうですよ。私は小説家でもあり、探検家でもあります。

ユミズ 名前は? 本当の名前があるんでしょう? 小説家が小説家だなんて変です。

小説家 内緒です。この姿も本当の私の姿ではない。まぁ、夢の中を旅する仮の姿とでも

   言っておきましょう。

ユミズ なんだか変な話になってきたなぁ。そろそろ起きないと乗り過ごしてしまう。い

   やいや寝過ごしてしまう。

小説家 大丈夫ですよ。あっちとこっちでは時間の流れ方がまったく違いますからね。そ

   れで、今日はどうされたんですか?

   小説家が医者にユミズが患者になる。

ユミズ はい。なんか熱っぽくて。

小説家 それはいけませんね。ちょっと踊ってみてください。

ユミズ 何を踊りましょうか?

小説家 そうですね。ラジオ体操第3をお願いします。

ユミズ 知りません。

小説家 それはいかん。インフルエンザですね。

ユミズ インフルエンザですか。

小説家 いま、カンフル剤を撃ちますね。おい、ナース! バズーカ!

ユミズ 治るでしょうか?

小説家 あっという間ですよ。ウイルスも跡形もなく吹き飛ばしますから。

ユミズ 良かった。僕、2時間後に結婚式なんですよ。

小説家 それは良かった。お嫁さんは未亡人にならずに済んだわけだ。

ユミズ あっはっは!

小説家 あっはっは!

   元に戻る。

ユミズ 何これ! 何だよこれ! 意味がわかんないよ!

小説家 あ、それはね。2時間後に結婚するんだから、バズーカで吹き飛ばされてもお嫁

   さんになる人はまだ結婚していないんで未亡人にはならないよねって言うことなん

   だね。

ユミズ そっちじゃないよ!

小説家 ラジオ体操のほう?

ユミズ そっちでもない!

小説家 あぁ、混線ですよ。

ユミズ 混線?

小説家 その辺で寝ている人の夢に触れたんでしょう。これは快速なので完全に拾わなか

   った。それだけです。

ユミズ これ快速だったんですか?

小説家 知らずに乗ったんですか?

ユミズ 知りませんよ。だって、これは夢でしょう?

小説家 失礼ですが乗車券は?

ユミズ 乗車券? ああ、定期なら持ってたかな。

   ユミズ、ポケットなどを探って定期券を探す。

ユミズ あれ? 無い。

小説家 無いんですか?

ユミズ 無いですね。

小説家 それは大変ですよ。この電車、無賃乗車には大変厳しいんですよ。私の乗車券を

   差し上げましょう。

   小説家、胸ポケットから名刺くらいの白い紙を取り出してユミズに渡す。

ユミズ いいんですか? あなたは困りませんか?

小説家 私はもう降りますから。困りませんよ。

ユミズ まだ走ってますよ。

小説家 大丈夫。

   小説家、窓の外に走る黒い影に気がつく。

小説家 あ、あれはジャックだ! あいつは良い夢を見るんだよなぁ。ではこれで。

   小説家は走り去る。

ユミズ ちょっと、ジャックって誰ですか!

   すぐに小説家が戻ってくる。さっきとは雰囲気が違う。

ユミズ ああ、良かった。で、ジャックって誰ですか?

小説家 おめえこそ誰だよ。

ユミズ え? 何ですか急に。

小説家 急に離しかけてきたのはおめえだろ。なれなれしくよぉ、気持ちが悪いんだよ。

ユミズ 変な人だなぁ。

小説家 おめえのほうが変だってーの。

ユミズ 私、変ですか?

小説家 ちっと黙っててくれねえかな。明日までに曲が出来ないとやべえんだよ。

ユミズ 曲。ああ、今度は小説家ではなくミュージシャンなんですね。

小説家 だからおめえ何なんだよ。邪魔すんなって言っただろ。時間がねえんだよ!

ユミズ 大丈夫ですよ。ここは時間の流れが違うんです。

小説家 は?

ユミズ 時間の流れが違うんです。

小説家 どんな風に?

ユミズ それは聞かされてないなぁ。

小説家 (舌打ち)んだよ。嘘かよ。

ユミズ すみません。

小説家 ダメだ。全然うかばねぇ。

ユミズ ダメなんですか?

小説家 ああ、ダメだ。俺はもう終わりだ。一発屋になることも出来なかった。誰でも一

   生に一度くらいは100万人を感動させる歌を作ることが出来るなんて有名な歌手

   が言ってたけど、俺には10人を感動させる才能もなかった。俺には何もなかった。

ユミズ なんか落ち込んでるなぁ。慰めてあげたいけど、何にも浮かんでこないな。

小説家 いいんだよ。俺の夢はここで終わりさ。

ユミズ あ、私のおばあちゃんがこんなことを言っていました。しょうが汁を飲んでおく

   と乗り物に酔わなくなるけど、それを飲んで気持ち悪くなっちゃ意味がないよね。

   って。

   小説家、意味を少し考える。

小説家 え?

ユミズ 人を感動させるのは歌でしょうか?

小説家 歌だろう。だから歌うんだ。他に何があるんだ。

ユミズ じゃあ、あなたは必要ないじゃないですか。歌だけがそこにあればいい。あなた

   が歌う必要はない。だって歌がそこにあればいいんだから。そもそもあなたが感動

   させたい100万人は歌が聞きたいんですか?

小説家 そうだ。そうだと思う。

ユミズ あなたが歌う歌を聞きたいんじゃないんですか?

小説家 俺の歌う歌?

ユミズ その歌は誰かを感動をさせたい。そう思って作られた歌ってなんでしょうか。そ

   れはやっぱりただ作られた歌なんじゃないんでしょうか。作り物で人は感動できる

   ほど安っぽい生き物なんでしょうか。

小説家 作り物じゃないものなんて無い。

ユミズ そうですね。でも、そこに真実がなければ、それは偽物ですよ。あなたが歌う歌

   で、あなた自身を歌わなければ、誰も感動しないんじゃないでしょうか。

小説家 俺自身を歌う。

ユミズ 何かを作ろうとするあまり、全てを作ってしまおうと思ってたんじゃないです

   か?

小説家 そうか。そうだよな! サンキュ! 目が覚めたぜ。

ユミズ 良かった。

小説家 おっと、そろそろ行かないとまずいな。なんたって目が覚めたんだからな!

ユミズ いい曲が出来そうですか?

小説家 おかげでね。新曲、楽しみにしててくれよな!

   小説家、走り去る。そしてすぐ歩いてやってくる。

小説家 今のウグイスでしたね。何かあったんですか?

ユミズ 今度は誰ですか?

小説家 小説家ですよ。わかりませんか?

ユミズ わかりません。みんな同じに見えます。

小説家 ジャックの奴逃げ足が速くて。

ユミズ ジャックって誰ですか?

小説家 今井さんちの柴犬です。最近はまめ柴ブームのせいで少しひねちゃってて、大変

   なんですよ。まったく困った奴だ。

ユミズ あなたは一体何をしているんですか?

小説家 私は夢を集めているんです。

ユミズ 夢を集める?

小説家 はい。どうしても見つからないときは終点の夢置き場まで行って探しますけど、

   たいていは新しい夢のほうが刺激がありますからね。この辺りで集めて帰ります。

ユミズ 夢置き場?

小説家 終点の駅名です。

ユミズ そこには夢があるんですか?

小説家 ありますよ。

ユミズ 楽しそうだなぁ。

小説家 楽しいばかりのところじゃありませんよ。夢置き場は、ゴミ捨て場でもあります

   から。特に暗がりにある夢には気をつけたほうがいい。

ユミズ なぜです?

小説家 悪夢だからです。幽霊や化け物が沢山いるんですよ。きちんとした準備もなく行

   っては、生きて帰ってくることだって出来ませんよ。

ユミズ おっかないですね。

小説家 はい。恐ろしい場所ですよ。夢置き場に行くときには万全の準備を整えていかな

   いといけないんです。まぁ、日の当たっている場所にいれば絶対に安全なんですが

   ね。

ユミズ なんだ安全なところもあるんじゃないですか。

小説家 そりゃそうですよ。なかったら夢を拾いに行くこともできやしない。

ユミズ 夢を拾ってどうするんですか? 食べるんですか?

小説家 私はバクじゃありませんよ。

ユミズ なんです? バクって?

小説家 バクは夢を食べる妖怪です。時々、間違えて人間を食べることもありますけどね。

ユミズ へー。

小説家 夢を拾ったら使えるかどうか見てみて、使えそうなら持って帰ります。そしてそ

   れを小説に使います。

ユミズ それって盗作になりませんか?

小説家 なりませんよ。アイデアのリサイクルですから。

ユミズ なるほど。小説家って言うのはそういう事をしているからアイデアに困らないん

   ですね。

小説家 してませんよ。私だけです。

ユミズ そうなんですか?

小説家 夢置き場はゴミ捨て場のようなものです。あきらめた夢や見なくなった夢、捨て

   た夢や忘れた夢が吹きだまる場所なんです。普通の小説家はそんなところには行き

   ませんよ。自分自身がありますから。

ユミズ あなたにはないんですか?

小説家 どうですかね。これが私ですから。

ユミズ そうかぁ。そろそろ起きて降りるかな。きっと目が覚めれば何事もなかったただ

   の日常が戻ってくるんでしょうね。

小説家 そうですね。

ユミズ だから夢オチって嫌いなんですよ。何か寂しいものがありますもんね。

小説家 ここは違いますよ。

ユミズ え? 違うんですか?

小説家 時間の流れが違うと言っても、現実世界とつながっていますからね。なかったこ

   とにはなりませんよ。

ユミズ でも、現実じゃないんでしょう?

小説家 現実じゃないですけど、きちんと時間を失います。

ユミズ あぁ、なるほど。でも、夢オチでも時間は失いますよ。読んだ時間や見た時間な

   んかをね。

小説家 まあ、そこは見解の相違と言うことですね。

ユミズ そう言われてしまうと会話も終わってしまいますよ。

小説家 そうですね。では、あなたの夢を聞かせてください。これで会話はまた始まりま

   すよ。さあ、どうぞ。

ユミズ 私の話ですか。何を話したらいいのか。

小説家 小さい頃の夢は?

ユミズ 電車の運転手。でもこれは小学校を出る頃には変わってました。

小説家 夢を捨てたんですね。

ユミズ そうなりますね。

小説家 次は?

ユミズ 野球選手。

小説家 ずいぶんな飛躍ですね。電車の運転手から野球選手なんてつながりがまったく見

   えない。

ユミズ そうなんですよ。

小説家 どうして野球選手になろうと?

ユミズ 中学校に入ったとき、好きな女の子が野球をしている人が好きって言ってたので。

小説家 単純ですね。

ユミズ はい、単純だったんです。

小説家 それもあきらめた?

ユミズ 告白して振られてしまいましたから。

小説家 なるほど。

ユミズ それからは特に将来の夢もなくて、

小説家 あなたが気がついていないだけかも。

ユミズ え?

小説家 結婚は夢ではなかった?

ユミズ 幸せな家庭は夢でした。でも、

小説家 現実は違った?

ユミズ すれ違いが多くて。

小説家 奥さんとはどこで?

ユミズ 会社の同僚でした。

小説家 なるほど。

ユミズ うちの会社社内恋愛が禁止だったんで彼女が首になったんです。今になって、私

   はまだまだ仕事を続けたかったのにって、

小説家 それでケンカをした?

ユミズ しました。最近は毎日のように。

小説家 いけませんねぇ。女性に暴力を振るっちゃ。

ユミズ 逆ですよ! 妻はすごいボディーブロー打つんです。会社で何か言われると面倒

   くさいからって。それに、少し押しただけで大げさに転んで、逆にDV被害で僕を

   を訴えて……。

小説家 散々ですね。

ユミズ マイホームも実は夢だったんですよ。でも、それももう諦めなくちゃ。そうだ。

   子供とキャッチボールをするって言う夢ももうダメなんだなぁ。

小説家 探してみたらどうですか?

ユミズ 何を?

小説家 夢を。

ユミズ 夢を?

小説家 そうですよ。夢置き場に行って、新しい夢を手に入れるんですよ。もっとも夢自

   体は古いですがね。

ユミズ でも、怖いところなんですよね?

小説家 暗いところに行かなければ大丈夫ですよ。

ユミズ 行けますかね?

小説家 乗車券をお持ちですよね。

ユミズ これで行けるんですか?

小説家 行けますよ。大丈夫です。もう着きますよ。

ユミズ 早いですね。

小説家 早いものです。諦めてしまったら特にね。

ユミズ あ、あなたは? 私に乗車券を渡したらあなたのがないんじゃないですか?

小説家 大丈夫です。もう1枚持ってますから。このまま乗っていれば怒られずにやり過

   ごせますから。

ユミズ それはなんだか悪いなぁ。

小説家 たいした額ではありませんから、お気になさらずに。

ユミズ どんな夢があるんでしょうか?

小説家 どんな夢でもありますよ。

ユミズ しあわせな夢も?

小説家 しあわせな夢も。

ユミズ それは楽しみですね。

小説家 楽しいですよ。ほら、着きましたよ。

   電車が止まる。ドアが開く音。

   ユミズが電車から降りる。

ユミズ ここが夢置き場ですか。

小説家 あなたのおかげで面白い小説が書けそうだ。いい夢が見つかるといいですね。

ユミズ 見つけます。もう一度、やり直します。今度こそ幸せな夢をつかみますよ。小説

   楽しみにしていますよ。

小説家 では、がんばって下さい。

ユミズ あなたも。

   発射ベルが鳴り、ドアが閉まる音がする。

小説家 そうだ。言い忘れていたことがありました。

   その言葉はドアに阻まれてユミズには聞こえない。

小説家 これから明かりの無い夜が来るんですよ。さようなら。

   暗転。

                                       幕

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