CLARISSA 第十場

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CLARISSA 第十場 

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第十場

   朝。岩場。岩場に人魚が座っている。側にヨハンが倒れている。身体に

   痣の後。服はボロボロになっている。すでに息は無く事切れている。

人魚    バカな子だよ。……あの人もいない。まったく嫌な町になっちま

     ったね。

   クラリッサが手に荷物を持って上手から歩いてくる。

クラリッサ 人魚さん。ヨハンがいないの。

   クラリッサ、倒れているヨハンに気が付く。

人魚    今朝、海の中で見つけたのよ。

クラリッサ いや……。いやあああああああ!

   クラリッサ、ヨハンの死体にすがりつき、声を上げて泣き続ける。声に

   ならない声。

人魚    人魚になる特別な言葉って言うのはね。心の奥底からの慟哭なの

     さ。それが海の神様に届いた時に人から人魚へと変わっていくのさ。

     他に必要なものなんて本当は何一つないんだよ。

クラリッサ もう嫌、こんなところ。もう嫌よ。ヨハン、二人で行きましょう。

     海の向こうに。もう離れないで。二度と離さないでね。

   クラリッサ、ヨハンを引きずるように海に向かっていく。

人魚    お前は、きっときれいな人魚になるよ。

   クラリッサとヨハンは吸い込まれるように海の中に消えていく。

人魚    ほら、風が吹いてきた。(風の音が聞こえてくる)海の神様がお前

     を受け入れてくれたんだよ。(風の音はどこか啜り泣きにも聞こえて

     くる)泣くがいい。心の底から泣くがいい。その張り裂けた心が嵐

     を呼び、何もかも押し流してくれるだろうよ。永遠に続くと思うよ

     うな悲しみだけがお前を救ってくれる。そうして、涙が枯れ果てた

     時、お前は人魚になっているのさ。

   照明のフェイドアウトと同時に風の音が強くなり、荒れ狂う風の中、幕

   が閉じる。

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CLARISSA

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