一人舞台 ●「男割り」

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一人舞台 ●「男割り」

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●「男割り」

   夜の繁華街。相当酔っている猿渡の後ろには同僚がいる(らしい)。

猿渡  だーかーらー、表には書いてあったんだってばぁ。お、と、こ、わ、りって。い

   い? おとこわり。だから来たんですよ。それが何で、男が入れないんですか? バ

   カですかぁ?

   話を聞く。でも聞こえてない。

猿渡  何度も何度も同じことを言って、お前は留守番電話か。じゃあ、何で表に男割り

   って書いてあるんだ? だからお断りだって? お断りなのは何度も聞いたの。俺

   が聞きたいのは男割りの話なの。わかる? 知らないよ。何が「なんです? 男割

   りって?」だよ。お前じゃ話になんないよ。店長呼んで来い。店長。

   猿渡、話を聞く。

猿渡  あ、お前が店長なのか。そうか。じゃ、聞くぞ。表の看板に書いてあった男割り

   って言うのは何だ? 違うな。お前話をそらすのが上手いな。男性客は男割りって

   んだから、しっかりと割引をしろ。俺たちはここで飲むんだ。なんだよ。

   猿渡話を聞く。

猿渡  男は入れないって、何でだよ? 男割りなんだろ? ん? だから看板と言って

   ることが違うんだなお前は。店長を連れて来い。あ、お前が店長だったな。いいか、

   何で俺たちがここで飲めないのかを説明しろって言ってんだ。俺たちはお客様だぞ。

   ん? ここは女性専用の店だ? しらないよ。初めてくんだもん。女性専用でも何

   専用でもいいよ。それよりも……、じゃあ、何で女性専用の店に男割りの看板なん

   か出すんだよ? あれか、わかったぞ。イケメンでないと入れないって奴か。お前

   は俺たちを差別をするのか。確かに俺たちはいけてない。でもな、イケメンじゃな

   くても空気を吸うんだぞ? 食べ物を食べるんだぞ? そうだぞ。イケメンだって

   ウンコするんだぞ。

   猿渡話を聞く。

猿渡  おう、わかった。そこまで言うなら見に行くぞ。俺も優しい男なんだ。白黒はっ

   きりしたい年頃なんだ。よし、お前も来るんだな。恥をかかせてやるぞ。漢字で書

   いても遅いからな。そうだぞ。後で謝っても遅いからな。ごめんなさいで済んだら、

   警察なんかみんな解雇されてるんだからな。看板の前で土下座するんだぞ。それが

   大人の謝り方ってもんだ。

   猿渡少し歩く。

猿渡  ほれ、読んでみろ。おとこわり! おとこわりだろ? ん? 何だ佐藤?

   猿渡、目を凝らして「看板」を見る

猿渡  お前のせいで酔いが覚めてきちまったな。おう、みんな行くぞ。俺、いい店知っ

   てんだ。

   暗転。

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