たとえばこんなオオカミ少年 第三場

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たとえばこんなオオカミ少年 第三場

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第三場

   村。

   少年が歩いてくる。

少年   なんだよみんな。オイラ、本当のことしか言ってないのに、オイラのことを嘘

    つきだって言いやがって。おばさんに最近太りました? って言って何が悪いん

    だよ。本当のことじゃないか。

   親方がやって来る。

少年   親方! オイラの話を聞いてください。

親方   ふん、お前の嘘に付き合ってやれるほど暇じゃないんでな。誰かもっと騙され

    やすい奴を選ぶんだな。

少年   オイラ、嘘なんかついてないよ! 本当のことを言っただけだよ。

親方   何? 本当のことだと? 何が本当のことだ。くだらない嘘なんかついていな

    いできちんと仕事しろ。

少年   だから、嘘なんてついてないって、オイラの仕事はみんながやっちまったから、

    やることがないんだよ。

親方   何? まったくサボろうとして、そんな嘘をつきやがって。

少年   嘘じゃないよ! みんなに聞けばわかるよ。

   村人Aがやって来る。

親方   ちょうどいい。あいつに聞いてみようじゃないか。おい。

村人A  はい?

親方   お前、こいつの仕事を代わりにやってやったのか?

少年   オイラの代わりに小屋の掃除をしてくれただろ?

村人A  小屋の掃除? やってないよ。それどころじゃないんだ。自分の仕事だけでも

    忙しいのってに。

少年   え?

親方   そんなことだろうと思った。サボるつもりだったな?

少年   嘘だ!

村人A  大体、どこに他人の代わりに小屋を掃除してやる奴がいるんだ? 自分の仕事

    だってあるのに。

親方   まったくそのとおりだ。

少年   オイラ、嘘なんかついてないよ。何で嘘を言うんだよ。

村人A  お前と一緒にするな! ああ、忙しい忙しい。

   村人A、去る。村人Bが来る。

少年   あ、オイラの話を聞いてくれよ。

村人B  なんだ?

少年   オイラの代わりにミルクを売りに行ってくれただろう?

村人B  何を言ってるんだ? お前が行かなかったから、ミルクはみんな腐っちまった

    ぞ? どうしてくれるんだ。大切な商品だったのに。

少年   そんな、嘘だ。何でそんなことを言うんだ。

村人B  失敗の責任を俺になすりつけようったって、そうは行かないぞ! しっかりと

    反省しろ!

   村人B走り去る。

少年   なんで、みんな嘘をつくんだよ。

親方   嘘つきはお前だ。小屋の掃除をサボるのはまだ許せる。だが、商品をダメにす

    るなんてお前はとんでもない奴だな。

少年   オイラ、悪くないよ。

親方   自分のやったことから目を背けるなんて、最低の人間のすることだぞ。

少年   オイラは嘘なんかついてない!

親方   お前は嘘つきだ! みんながそう言ってるんだ!

少年   じゃあ、みんなが嘘つきなんだ! 全員、嘘つきだ!

親方   反省しないなら、もうここにおいておくとは出来んな。お前はクビだ。

少年   え?

親方   もう知らん。かわいそうだと思って置いておいてやれば、お前は恩を忘れて俺

    を損させてばかりいる。出て行け。どこにでも好きなところに行って、好きなだ

    け嘘をついて来い。

少年   オイラは嘘なんてついてない。

親方   まだ言うか。なんて奴だ。

少年   こんな嘘つきばかりのところなんか出て行ってやる!

   少年、走り去る。村人A、Bが戻ってくる。

村人A  どうです?

村人B  俺、上手くやったでしょう?

親方   よしよし、これで俺の商売も安泰だ。さぁ、ぼけっとしてないで仕事にかかれ! 

    忙しくなるぞ!

村人B  忙しいのは嫌だなぁ。

村人A  昼寝が出来なくなるなぁ。

親方   返事!

村人AB へ~い。

親方   もっとしゃんとしろ!

村人AB しゃん!

   暗転。

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