＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
たとえばこんなシンデレラ 第三場
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
第三場
屋敷にマルコ。継母が出てくる。
継母 こんなところでサボってないでさっさと仕事をするんだよ。
マルコ はい、奥様。
継母 忌々しいね。財産を全部横取りできると思ったら、いろんな面倒くさい条件
をつけやがって。本当に嫌な男だったよ。死んでも人に迷惑をかけるなんてね！
マルコとキャシーがすれ違うように入れ替わる。
キャシー ママ。何でシンデレラを追い出さないのよ？
継母 あぁ、本当に忌々しいことにね。あいつの父親がつまらない遺言を残したせ
いで財産はすぐには手に入らないんだよ。
キャシー どういうこと？
継母 私たちが受け取った財産は全財産の内のたったの１０分の１。
キャシー たったそれだけ？
継母 そうよ。しかも、シンデレラの面倒を見ないともらえないって言う胸の悪く
なるような条件がついてるのよ。そのほかにも嫌がらせが満載よ！ あの気取
り屋、意気地がない上にずるがしこいと来たもんだよ！
キャシー 何ですって？
継母 まったく何ですってよ！
キャシー じゃあ、これからあいつに頭が上がらないの？
継母 ……面倒を見るのが条件だからね。
キャシー ねえママ。
継母 なんだい？
キャシー 犬にご飯を食わせるのって面倒を見ることよね？
継母 まぁ、そうだね。
キャシー じゃあ、シンデレラにご飯を食べさせるのも同じよね？
継母とキャシー意地の悪い顔で笑いあう。
継母 まぁ、そうなるねぇ。犬もご飯を貰って恩に思うくらいだろうさ。
キャシー シンデレラはお礼に掃除くらいはしてくれるかもしれないわね。
継母 じゃあ、私が万事指示するから、お前は黙ってな。
キャシー わかったわママ。
継母 シンデレラ！ シンデレラ！
シンデレラ汚い格好で登場。
シンデレラ お呼びですか奥様。
継母 いい子だね。口の利き方を覚えてくれて私も嬉しいよ。旦那様が死んだのは
知ってるね？
シンデレラ はい。
継母 本当なら、お前を放り出してもかまわないんだけど……。
シンデレラ 困ります。ここを出て行ったら、行くところなんてないもの。
継母 そうだろう？ それじゃあいくらなんでも可愛そうだ。私たちだって鬼じゃ
ない。
キャシー 鬼じゃない。
継母 お前がこのうちのことを今まで以上に頑張ってくれるなら、おいておいてや
らないこともない。
シンデレラ 本当？
キャシー 何よ、その口の利き方！
継母 本当ですか？ いや、本当でございますか、奥様？ だろう？
シンデレラ ……本当でございますか、奥様。
継母 ふん。その代わり、逆らったらいつでも外にほっぽり出すから覚悟しておく
んだよ。
シンデレラ わかりました。
キャシー ありがとうは？
シンデレラ え？
継母 お礼も言えないのかい？ 親の顔が見てみたいもんだね。
シンデレラ ありがとうございます。
継母 それでいい。
キャシー ママ、あたし欲しいお洋服があるの！
継母 なんだい、早速おねだりかい？ しょうがない子だねぇ。
継母とキャシー楽しそうに去っていく。シンデレラ、その場に座り込み顔を伏せる。
暗転。
Next→→→第四場
