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一人舞台 ●「収監者」
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●「収監者」
白黒男が座っている。そばには古タイヤが転がっている。
白黒男 何見てんだよ。よってたかって俺をこんなところに閉じ込めやがってよぉ。故郷
に返してくれよ。何十時間も狭い部屋に押し込めやがって、やっと広くなったと思
ったらまたオリの中だよ。俺が何したって言うんだよ。悪いことしたのかよ。どい
つもこいつも俺の話をまともに聞きゃあしねぇ。あいつ元気かなぁ。故郷の友達は
みんな今頃何をしてるかなあぁ。思えば故郷でも高い壁が俺たちを囲んでいたなぁ。
爺さんたちのそのまた爺さんたちは野山で自由に暮らしていたっていってたな。そ
んなの幻想だな。
白黒男、床に寝転がり駄々をこねる。
白黒男 出せよぉ。俺を出してくれよぉ。友達を遊んでるところを邪魔しやがって! 俺
はもっと遊びたかったんだよ!
ゆっくり起き上がる。
白黒男 そろそろ飯の時間か。今日の飯はなんだろ。たまには上手いもの食いたいなぁ。
こんなところじゃ贅沢は言えないか。
食事が置かれる音。
白黒男 また笹か……。確かに食うけどさ。笹が主食だとか思われたくないんだよなぁ。
もっとさぁ肉が食いたいなぁ。イメージがどうのって言うよりも食事のバランスが
大事だと俺は思うわけ。果物飽きたー! 笹飽きたー! 肉よこせ! 肉よこせ!
肉よこせ! 何がかわいくないだよ。バーカ。俺の故郷はチベットなんだよ! 中
国なんかじゃないんだよ! そもそもなんであんな国に利用されなきゃならねえん
だよ。フリーチベット! フリーパンダ! レンタル反対! 俺は声を大にして言
いたい! パンダに自由を! こんな狭い臭い同じ場所に閉じ込められるなんても
う嫌だ! 国に帰してくれ! 国を返してくれ! 絶滅するならそれでもいい。俺
達の尊厳を返してくれ!
腹が鳴る。
白黒男 話は飯の後にしようか。笹、俺あんまり好きじゃないんだよね。
暗転。
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