7人の大人 第二場

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7人の大人 第二場

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第二場

   森の中にある山小屋。

   大きいが、ゴミが散乱していてとても人が住んでいるような状態ではない。

   真ん中に大きなテーブルがあるが、汚れた食器や骨などが、放置されている。

   どかどかと小屋の中に入ってくる7人の大人。姫は袋の中に入っている。

F で、この後のことなんだが

B まずは晩飯を食べないとね

A その辺のものを拾って食ってろ

F じゃあ、まずはこのお譲ちゃんの身元を調べようじゃないか

G そうだね

   袋から姫を出す。

姫 くさいくさいくさいくさい! こんなところにいたら死んじゃうわ!

C うるさいな。ちょっと黙らせろ

D お前が黙らせろ

E お前が黙らせろ

F お前が黙らせろ

G お前が黙らせろ

A お前が黙らせろ

B お前が黙らせろ

C 何で戻ってくるんだよ! 俺はいやだよ!

A 俺もいやだ

D 俺もいやだ

F 俺もいやだ

E 俺もいやだ

B 僕もいやだ

G 俺もいやだ

A 言い出した奴が、責任を持て

C お譲ちゃん、我慢しな

姫 くさーい

D それで、おうちはどこだい?

姫 こんなくさいところじゃ、会話はしないわ

A あのなぁ

C よし、窓を開けろ

E お前が開けろ

B 今忙しいから無理だよ

F 窓くらい自分で開けろ

D 窓くらい開けてやれよ

姫 あたしが開けようか?

A お前は動くな

   C、自分で窓を開けに行く。

C これで大分ましになっただろ?

姫 ほんの少しね

E よし。で、お前は金持ちなのか?

姫 お金持ちよ。普段なら、あんたたちみたいな貧乏人とは口も聞かないけど、今日は仕

 方がないわ

A 激しく腹立たしいな。親の顔が見てみたいもんだ

D こんな憎まれ口叩くから、捨てられたんじゃないのか?

姫 うるさい!(Dのすねを蹴り上げる)

D ぎゃ!(うずくまる)

B ねー、何もないよ

D このちび!

姫 あたしに何かあったら、あんたたちには金貨一枚も手に出来ないんだからね!

A そんなこと言って、たいした家の子じゃなかったら、どうなるか分かってるんだろう

 な?

姫 あなたたちこそ、あたしの身分を知って、怖気づくんじゃないわよ?

F もったいぶってないで、さっさとどこの家の子か言えよ

E お城の子とか言い出したりしてな

姫 そうよ

D 馬鹿言うなよ

F そんなわけあるかい

A 嘘をつくならもっとまともな嘘をつけよ

姫 嘘じゃないわ

B 嘘じゃないよ

大人たち え?

B だってあんな美味しいもの食べたことないもん

D お前は黙ってろ

A 証明するものは?

姫 ないわ

F じゃあダメだな。縛っておけ

 D、姫を縛り上げる。

姫 ひどいわ! こんなの虐待よ

C 大人を騙すんじゃない

姫 お前! 解きなさい!

G 嘘をついちゃいけないよ

A うるさいから猿轡もしとけ

 C、姫の口に猿轡をする。

A で、これからのことだが…

E どうする?

B どうする?

F どうしよう?

B ご飯にしよう

C どうするかなぁ

A よし、(CとFに)お前とお前、俺と一緒に来い

E どうするの?

B また狩りにいくの?

A ちょっと町まで行って来る

C なるほど

B 買い物だね

F そんな金ないよ

A お姫様が行方不明なら、町はきっと大騒ぎだ。俺たちはそれを調べに行くんだよ

B いいなぁ

E 俺も町に行ってみたいなぁ

A 他の連中は、そいつを見張ってろ

C 逃がすんじゃねえぞ

   A、C、F外に出て行く。

D なぁ

E ん?

D (Bを指差して)あいつとは一緒にされたくないんだが、今日食うものが無いのもい

 やだよな

E そうだね

G 何か取りに行く?

B なになに?

D 晩飯のことだよ

B 何食べるの?

E お前は無しだよ。さっきなんか食ったろ

B えー

G なんか取りに行くの?

D (Eの肩を叩く)こいつと俺でなんか取ってくるから、お前たち二人は、こいつを見

 張ってろ

B 僕も行きたい

D お前が来たら

E 取ったそばから食べるからダメだ

B そんなことしないよ

G 俺たちでアレの相手をするの?

D 晩飯無しはいやだろ?

B うん

E じゃあ、頑張れ

G わかった

   DとE、外に出て行く。

B どうしよう

G どうしよう

   姫、暴れる。

B 暴れてるね

G 暴れてるね

   姫、急におとなしくなる。

B 静かになった

G 疲れたんだよ

B 死んだりしてないかな?

G え

B 死んじゃったら、マズイよね

G 怒られちゃうね

   姫に近づいていくB、G。

B 大丈夫?

   姫、ぐったりして答えない。

G これ、まずくない?

   G、猿轡をはずし、姫の頬を軽く叩く。

G どうしよう

B 解こう

G うん

   解いた途端に、走り出す姫。

B 生きてた

G よかった

B でも、逃げ出されたら困るね

G 怒られちゃうね

B、G 捕まえよう!

B おとなしくするんだ

姫 いやよ!

G もう縛らないから

姫 信用できないわ!

   姫を捕まえようとする2人。華麗に逃れる姫に、息も絶え絶えの2人。

姫 じゃあね!

   外に出ようとする姫。

G 待って、今から外に出ると大変なことになるよ

B 道に迷うと、森の獣の餌になるよ

姫 そ、それもそうね

B 僕らも叱られるし、ここにいてくれよ

姫 じゃあ、お前とお前、今から私の家来になりなさい

G え

姫 いやなら出て行くわ。道に迷うくらいたいしたことないもの。それでお前たちは、叱

 られればいいんだわ

B どうする?

G 家来はいやだなぁ

B でも、晩御飯抜きもいやだし

G とりあえず従っておく?

B そうしようか

姫 ブツブツ言ってないで、どっちにするの?

B なります

G なります

姫 じゃあ、まず名前を教えて

B 名前?

G 名前って?

姫 お前たち、名前も知らないの?

B まだ食べたことない

姫 食べ物じゃないわ。お前たちどういう風に呼び合ってるの?

G おい、とか、お前とか

姫 不便じゃない?

B あんまり考えたことがない

G だよねぇ

姫 不便よ

B どうしてさ?

姫 (Bに)あなただけを呼ぶときにどうしたらいいのよ

G あー、そういうことか。食いしん坊とかかな

姫 じゃあ、あなたは?

G 俺?

B お人よし

G 何だとこの野郎!

姫 ほら! 用事があるたびに喧嘩をしてたら、話が進まないわ

B、G 確かに

B そうは言ってもねぇ

G 俺たちこの森に捨てられて、ここで長いこと暮らしてるけど、そんなに不便じゃなか

 ったもんなぁ

姫 信じられない

B じゃあ、お前はなんて言うんだ?

姫 スノウよ

G 相撲かぁ、なんか国技っぽい名前だな

B あははは

姫 スノウ! 雪のことをスノーって言うでしょ!

B ああ、雪のことか

G 雪にしてみたらずいぶんうるさい雪だな

B 雪は食べても美味しくないからなぁ

姫 こら! 家来の癖に主人の悪口を言わないの

B、G はいはい

姫 んー、でもいざ名前を考えると、びしっとっ来るものがないわね。なんかいいのな

 い?

B そんなこと言われてもなぁ

G 何でもいいの?

姫 いいわよ

B じゃあねぇ

姫 (Bに)お前はヘンリーね

B え? なんで?

姫 ぐずぐずしてるからよ

G あははは

姫 お前はジョージ

G ええっ

姫 あと何人いるんだっけ?

B 5人

姫 5人か

G みんなにも名前をつけるの?

姫 もちろん

B なんてつけるの?

姫 一人ずつ見てつけるのは面倒だから、入ってきた順につけるわ。次に入ってきた人は、

 そうね…

G 俺、ジョージか

姫 決めた。次はスチュワート。その次が、エドガー、次がリチャード、次はハロルド、

 最後は、ロバート

B それが入ってきた順になるの?

姫 そうよ。ヘンリー

B おお、僕はヘンリー

G そうさ、ヘンリー

B ええと、お前は

G 俺はジョージ

姫 ヘンリー、ジョージ。二人にお願いがあるの

G 何でも言ってくれ

B そうそう

姫 これから帰ってくる人たちを一人ずつ縛り上げて欲しいの

B え

G できるかな?

姫 できるわ。一人じゃ勝てなくても、二人でかかれば簡単でしょ?

B そっか

G やってみる

姫 お願いね

B あ、帰ってきたかも

姫 ヘンリー、ジョージ。準備して

   Dが入ってくる。

D いやぁ、ちょっと冷えてきたぞ

B、G おかえりスチュワート!

   B、GがDに襲い掛かる。

D 何が!

姫 はい。ロープ

   姫、Gにロープを渡す。あっという間に縛られるD。

姫 さ、次よ

   Eも中に入ってくる。

E 結構釣れるもんだね

D おい、気をつけろ!

B、G おかえりエドガー!

   B、GがEに襲い掛かる。

E なになに?

   同じように縛られるE。

D 気をつけろって言ったじゃねえか!

E そんなもん俺に言ってるとは思わねえだろうが!

姫 よくやったわ、ヘンリー、ジョージ

B えへへ

G それほどでも

E お前ら、こんなことをしてただで済むと思うなよ

B ねね、今持って来た魚食べてもいい?

姫 ダメよ。まずは、部屋を片付けなくちゃ

D あいつらが戻ってきたら、ひどい目にあうぞ!

G どうしよう

姫 大丈夫よ、ジョージ

D 何だよジョージって?

B 名前だよ

E 何で名前なんか付けられてるんだよ

G 俺らはあの子の家来になったのさ

D 本気でそんなこと言ってるのか?

B うん。家来になったら、美味しいものをたくさん食べさせてくれるもの

姫 そうよ

E まんまと丸め込まれたってわけか

D どこの誰かもはっきりしないのに

姫 さあ、ヘンリーとジョージ、ここを掃除して

B、G どうやって?

姫 え? したことないの?

B うん

G ないなぁ

姫 困ったわね。あたしもいつも見てるだけだったから…

   部屋を見回す姫。

姫 いいわ。今日は特別にあたしも手伝ってあげる。まずは汚れたものを外に出しましょ

 う

B スチュワートとエドガーも?

姫 二人は中において置いていいわ。外に出したら風邪引いちゃうもの

B わかった

D おい。そのスチュワーデスの江戸川ってのは何だ?

G (Dに)お前がスチュワートで、(Eに)お前がエドガー

E なんで?

D 勝手に決めるなよ

E 何で俺がエドガーなんだよ

姫 入ってきた順番よ

D スチュワートなんて、舌噛みそうだ

姫 あなたは自分の名前呼ばないからいいじゃない

D ああ、そうか

姫 で、相談なんだけど

E 何だよ

姫 家来になるなら、晩御飯を食べさせてあげるけど、どうする?

D 断ったら?

姫 名前もご飯も無し

   DとEコソコソ話。

E どうする?

D 三人が帰ってくるまでの辛抱だ

E よし

D わかった。お前の家来になる

E 家来になる

D ところでお前は、名前なんていうんだよ

G 相撲だってさ

姫 スノウよ!

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