フェイムルの移動図書館(2013) 第七場

****************************************

フェイムル移動図書館(2013) 第七場

****************************************

   ◆マタタビ

   ところ変わってマタタビ山。数匹の猫が、ゴロゴロしている。どの猫もやせ衰えて

   いる。そこに(上手より)兄妹とメルテルがやってくる。

   山の上に金のタマネギの芽が出ている。

   マイオ、マタタビ山を見る。

マイオ  山って言うか、ちょっとした丘だね。

リト   金のタマネギってどれかしら?

マイオ  マタタビってすごいんだね。

   リトは猫に声をかける。猫たちは面倒くさそうに返事をする。

リト   大丈夫?

猫1   ほっといてくれよぉ。今幸せなんだから。

マイオ  子猫たちがお腹を空かせてるよ。

猫2   ここにいればそんなこと気にならないさ。あぁ~、いい気分。

メルテル だらしのないやつらだなぁ。あ! あんなところに。

   メルテルがタマネギを指差す。

リト   金のタマネギだわ。

マイオ  よし拾ってこよう!

   マイオ、金のタマネギに近づくが白い煙が噴出してマイオは目を押さえてかけ戻っ

   てくる。

リト   どうしたの?

マイオ  わかんない。

リト   何言ってるのよ。

   リトが今度は金のタマネギに向かっていく。白い煙噴出。

   マイオと同じように目を押さえて戻ってくると、マイオを叩く。

リト   知ってて行かせたでしょ?

マイオ  ばれた?

メルテル どうしたの?

リト   目にしみるのよ!

マイオ  あのタマネギから何か出てるんだ!

   メルテル、タマネギに近づく。タマネギからは勢いよく白い煙が噴射されるが、何

   も起こらない。

メルテル なんともないよ?

マイオ  え?

リト   すごいわ!

メルテル すごい? すごいだって? 僕ってすごい?

リト   うん、あなたすごいわ!

メルテル 僕は、役に立ったんだ! やったよ! 僕は役に立たない本じゃ……、

マイオ  早く引き抜いて戻って来いよ! 涙が止まんないよ!

メルテル 嫌な奴。

   メルテルは金のタマネギを抜いて戻ってくる。目を押さえるマイオとメルテル。

リト   またしみてきた。

マイオ  もうちょっと離れてろよ。

メルテル ふん。

リト   そんなことより猫たちが心配よ。

マイオ  マタタビをどうにかしないとね。

リト   早く魔女を見つけないと。

マイオ  本当だね。なんだか怖くなってきたよ。

メルテル ほら、もう行こうよ。

マイオ  だけど放っておけないだろう。

メルテル 悪いのはこいつらなんだ。楽しみだけを求めたから、こうなったんだ。自業自

    得さ。

リト   でも、このままにしておいたら死んじゃうわ。

マイオ  そうだよ。

メルテル ほっといてくれって言ってるんだから、ほっとけばいいじゃないか。

マイオ  君、冷たいなぁ。

リト   少しは助けたいって思わないの?

メルテル 思わないね。人を助けてばかりいたら、自分が救われないからね。

リト   お母さんはいつも言ってるわ。人を助けたら、自分もいつかその人に助けても

    らえるだろうって。

メルテル 生憎、そいつらは猫だからね。人じゃありませんよ。

マイオ  君は本だしね。

メルテル そう。僕は本さ。だからタマネギも目にしみないんだ。

リト   まだすねてるの?

メルテル べつにー。

リト   マイオ、謝ってよ。マイオのせいよ。

マイオ  えー。

リト   はやく。

マイオ  わかったよ。(棒読み)君がいなかったら、タマネギが拾えなかったよ。そうし

    たら僕たちはとても困ったでしょう。どうもありがとう。

リト   そうよね。あなたとてもすごい本よ!

   メルテルの機嫌が少し良くなる。

メルテル そう? ……うん。僕も実はちょっと可愛そうだって思ってたんだよね。とり

    あえずふもとまで運んであげようか。

リト   そうこなくっちゃ。

マイオ  調子の良い奴。

リト   お兄ちゃん!

マイオ  はいはい。

   暗転。

Next→→→第八場