脚本解説「夜にうたえば」

「夜にうたえば」

 というお話。多分ネタバレがあるのでまだ読んでいない人は一度読んでからのほうがいいかも。

 もう少し色々盛り込みたかったが、ちょっと思うところがあって当時所属していた団体を離れたのでちょっと不完全燃焼気味である。

 

 青ひげは幽霊屋敷に魅入られて自分の欲望を満たすために人生に迷った者に青い扉を開けさせて魂を屋敷の中に縛り付ける。彼はそれが人助けとか苦しみから開放、救う行為だと思っているようだが実のところは自分専用の観客が欲しいだけである。

 

 桃花(とうか)は本来屋敷に来るべき人間ではない。完全なイレギュラー、場違いな人間である。彼女の役割は「みつからない鍵」である。青髭の幽霊屋敷には本当は鍵がない。一度迷い込んでしまったら、正解に気がついても抜け出すことが出来ないのである。ところが彼女は本来見つかるはずのない鍵という役割が与えられている。そのためにとにかく浮いている。

 

 マリコはごくごく普通に屋敷に取り込まれる側の人間である。特にこう役割はない感じだが、そのうち思いつくかもしれない。とりあえず人を羨ましがってばかりいる子である。

 

 ミカンは進めないし戻れない人間である。それはサクラが自分の半身だと思っているからである。毎年のようにサクラがいなくなった幽霊屋敷を訪れていても青い扉を開ける勇気も好奇心もないのである。

 

 この脚本はとにかくスピード感と速いテンポで舞台を縦横無尽にかき回すことを目的に書かれたので特に大きな感動はないし、腰が重い感じでやってしまうと客席に疲労感が貯まるだろう。全速力で駆け抜けることが求められるのである。

 

 ただ終始走っていればいいというわけでもなく、静と動の緩急が要求される非常に難しく挑戦的な脚本である。

 

 言ってみれば「感動そっちのけの勢いだけ」である。

 毎年、舞台には課題を与えていた。わざわざ言わないがそれでその段を乗り越えた者を次の舞台で重要な役を任せてみる。そういう感じであった。

 

 そもそも「頑張ったら次の舞台でいい役がもらえるかもよ」なんていうのはそこだけ頑張ればいいのかとか、別にいい役は欲しくないからいいやなんてことになる。せっかくいい感じに芽が出てきても次の年にいないなんてこともざらにある。

 そういった意味では学生とかが相手ではなくもう少し舞台にしか興味がないような人たちと舞台づくりがしたいと思う。

 

 歌の部分をいじくれば案外普通の芝居としても使えると思う。

 いろんな読み方をしても面白いと思う。たとえば卒業式によくある「アレ」とか。

 ただ賑やかしがあったほうが花があるとは思うのである。