たとえばこんなシンデレラ 第七場

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たとえばこんなシンデレラ 第七場

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第七場

   ボロ屋。

   机の上に置かれた推薦状を眺めるシンデレラ。

シンデレラ 一体誰が何を教えてくれるのかしら。

   子犬の精が現れる。

子犬の精  こんにちは。

シンデレラ こんにちは。今日はどうしたの?

子犬の精  スプーンは役に立った?

シンデレラ ええ。とても役に立ったわ。ありがとう。

子犬の精  お役に立てて何より。

シンデレラ おかげで舞踏会に行ける事になったのよ。

子犬の精  それは良かった。僕もブドウ食べたいなぁ。

シンデレラ ブドウ? ブドウが好きなの?

子犬の精  ブドウ狩りに行くんだろ?

シンデレラ 舞踏会よ。みんなで踊るの。

子犬の精  何だ食べられないのか。

シンデレラ そうね。でも、とっても楽しみなの。

子犬の精  そっか、あ、誰か来る。

   子犬の精、急いでかまどの中に逃げ込む。シンデレラは推薦状を体の後ろに隠す。

   キャシーがやってくる。

キャシー  シンデレラ! もっと沢山の金のスプーンを出しなさいよ! 毎日毎日同じ

     ような固いパンで飽きてしまったわ。たまにはお城で食べているような豪華な

     食事をしましょう。

シンデレラ お嬢様、申し訳ございません。灰も残りわずかなので、贅沢は出来ないので

     す。

キャシー  なあに? あなたあたしに口答えするの?

シンデレラ いいえ、そうではありません。

キャシー  灰なら、何かを燃やせばいくらでも出来るじゃないの。燃やすものがないの

     なら、お前の来ているその服だっていいのよ。

シンデレラ これだけはお許し下さい。

キャシー  そう言われると、かえって燃やしたくなるわね。脱ぎなさい。

シンデレラ 嫌です。

キャシー  脱がないとそのまま火をつけるよ!

   継母がやってくる。

継母    どうしたんだい? そんな大きな声を出して。またこいつが何かやらかした

     のかい?

キャシー  ママ、シンデレラがスプーンを出さないなんて言うの。灰が足りないからも

     う出さないって。

継母    何だって?

キャシー  ひどいでしょ?

シンデレラ そうじゃないわ。

継母    お黙り! シンデレラ。お前、まだ自分の立場がわかっていないようだね? 

     うん? 何を隠してるんだい?

シンデレラ ……なんでもありません。

継母    お出し。さっさと出すんだよ。それとも痛い目を見たいのかい?

シンデレラ ……。

   シンデレラ、推薦状を出す。

継母    これは……

キャシー  なあに?

継母    舞踏会の推薦状だよ。

キャシー  舞踏会ですって?

継母    お前、これを一体どこで手に入れたんだい?

シンデレラ それは……。

キャシー  そんなにいいものなの?

継母    ああそうさ。これがあればどんな者でも舞踏会に参加することが出来るんだ。

キャシー  まあ、素敵!

継母    そうとなったらドレスを新しくしないとね。シンデレラ!

シンデレラ はい奥様。

継母    仕立て屋を呼んできな。急いでね。

シンデレラ はい……。

   シンデレラ、ゆっくりと家を出て行く。

キャシー  ママ! あたしひらめいたわ。

継母    なんだい?

キャシー  その舞踏会で思い切り目立って、お金持ちを見つけるのよ。そうすればこん

     な生活なんてしなくていいわ!

継母    そうよ。もしも王子様の目に留まる事ができれば、お前は一生暮らしに困ら

     ないんだからね。しっかりやるのよ。

キャシー  任せて! あたし、頑張るわ!

   暗転。

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