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7人の大人 第六場
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第六場
暗転幕前。
鏡の妖精レグナンが歩いて出てくる。
レグナン はぁ、俺もう嘘をつくのに疲れちまった。おべっかを使っても俺には何の得も
無い。かと言って正直なことを言えば、おいらは割られてしまう。割られてしまったら、
この世を映すことが出来なくなる。あぁ、生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ。
妃 レグナン! どーこだいレグナン!
レグナン はい! 御妃様、あなたの鏡はここでございます。
妃 こんなところにいたのかい。部屋を勝手に出たらダメだろう?
レグナン 申し訳ございません。
妃 階段で転んで割れたりしたらどうするんだい。
レグナンは 割れる に過剰に反応する。
レグナン どうか私を大事に使ってくださいまし、美しいお妃様。
妃 わかっているよレグナン。ところで、こないだ言っていたことだけど、今、どうなっ
ているか聞いてもいいかしら?
レグナン あのことですか?
妃 あのことよ。
レグナン 大丈夫です。心の準備は出来ています。
妃 そうかい。では、鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰だい?
レグナン 神様、私の弱い心をお許しください。
妃 なんか言ったかい?
レグナン いえいえ、こちらの話。(咳払い)世界で一番美しいのはお妃様でございます
妃 本当かい?
レグナン 本当でございます。
妃 嘘を言ったら、割ってしまうよ?
レグナン わ、わかりました。私の主観で言いますと、藤井美菜が一番かと、いや、仲里
依紗も捨てがたい。あー、どうしよう! どうしよう! もっと大人で言うならば、竹
内結子か、広末涼子、あぁ、キャンドルになりたい! いやご年配の方に向けて吉永小
百合と言うべきか!(もう個人的な趣味でどんどん名前を挙げてくればいい)
妃 こっちの世界の話だよ!
レグナン それは失礼いたしました。この世界で一番は、お妃様でございます。
妃 嘘じゃないね?
レグナン はい。何の一番か言ってないので嘘はついておりません。
妃 お前の兄のマグランは嘘をついてどうなったか覚えているかい?
レグナン 覚えておりますとも。粉々になってどれが本当の自分なのか分からなくなって、
頭と心がおかしくなって死んでしまいました
妃 お前もそうならないように気をつけるんだね
レグナン わかっております。いつの世の正直者は早く死ぬのです
妃 あの小娘が死んだから、この国は私のものね。
レグナン いいえ。スノウ姫は生きております。
妃 なんだって?
レグナン 森に住んでいるきこりたちと元気に暮らしております
妃 あの馬鹿ども金貨が欲しくないのかね?
レグナン そりゃあ、欲しいでしょうねぇ
妃 それで、もう一人の方は? 狩人は今何をしてるんだい?
レグナン 木こりたちにボコボコにされて、熊のえさになってしまいました。
妃 何てことだろうね。
レグナン まったくですな。
妃 ところでレグナン。
レグナン はい。お妃様。
妃 お前、嘘をついてないだろうね?
レグナン 滅相もございません。私は正直が売りの誠実な鏡でございます。
妃 このまま行くと将来、あの娘がこの世で一番美しくなるんだね?
レグナン そうでございます。それはそれはとても美しくおなりになります。
妃 それを聞くと、私の心が割れてしまいそうだよ。
レグナン (過剰反応)割れるなんて! そんなことはおっしゃりませんように!
妃 こうなったら、毒の入ったりんごを食わせるしかないね。一口食べたら最後、全身が
凍り付いて姫は永遠に眠りに付くのさ。レグナン!
レグナン はい。りんごはすぐにご用意いたします。
妃 木こりの家の場所を教えなさい。
レグナン かしこまりました。
暗転。
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