7人の大人 第四場

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7人の大人 第四場

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第四場

   ハローワーク

   パイプ椅子に座っている赤木。真壁がパイプ椅子を持って来て隣に座る。赤木は椅

   子を持って移動。

アナウンス 351番の番号札をお持ちの方は、4番の窓口にどうぞ。

   赤木を追いかける真壁。逃げる赤木。

アナウンス 352番の番号札をお持ちの方は、5番の窓口にどうぞ。

   赤木、番号札を見て椅子を持って歩く。赤木と向かい合うように真壁が座る。

赤木  なんのつもりだ貴様。

真壁  私は相談員ですよ。いいんですか? そんな口を利いて。

赤木  相談員?

真壁  私を真壁と呼びなさい。

赤木  断る。

   真壁、書類にバツを書く。

赤木  何を?

真壁  これで失業手当は無くなりました。

赤木  卑怯だぞ!

真壁  何とでも言うがいい。

赤木  いいのか?

真壁  何が?

赤木  俺が今ここでお前の不正をしゃべればお前は終わりだぞ?

真壁  それが?

赤木  何?

真壁  私はここの相談員だといったはず。

赤木  ま、まさか!

真壁  そう。そのまさかだ! このハローワークはすでにシャレコウベイダーの手の中

   にある!

赤木  そんな馬鹿な!

真壁  残念だったな。元勤め先の管轄ではなく、自分の住んでいる地域の管轄のハロー

   ワークに行けば失業手当がもらえたのにな!

赤木  なんて悪どい連中だ!

真壁  ふふふ。人の話を聞かないからこういうことになるんだ。

赤木  確かに会社の事務の人が言っていた。住んでいる地域のハローワークに行けと。

真壁  ……あのね。

赤木  未練だ。会社に未練があった。その未練が俺をここに導いたんだ。

   白尾が真壁の後ろから現れる。

白尾  はい、真壁さん。ファイルです。

真壁  ああ、ありがとう。白尾さん。

赤木  白尾さん?

白尾  はい?

赤木  姫香ちゃん?

白尾  はい。

   沈黙。

赤木  あれ?

白尾  え?

赤木  俺、赤木猛。

白尾  はい。

赤木  あ・か・ぎ・た・け・し。

白尾  そう書いてありますよ。間違ってません。

赤木  あれ?

白尾  え?

赤木  エンジレッドの赤木猛。

白尾  あー!

   白尾、真壁に渡したファイルを奪い取り、ファイルと赤木を何度も見比べる。そし

   て興奮してファイルで真壁をたたく。

白尾  ほんとだ! 猛君だ! うわぁ、久しぶり!

赤木  本当に。ここで働いてるの?

白尾  うん。子供が中学校に入ったのを機にね。

赤木  あ、そうなんだ。

真壁  プ。

   赤木、マッハの速度で真壁の頬を張る。

真壁  痛い。

白尾  どうかしました?

赤木  どうかしました?

真壁  いえ。

赤木  あれ? 白尾さん?

白尾  うん。

赤木  名前、そのまま?

白尾  あぁ、去年離婚したの。

赤木  え?

真壁  プ。

   白尾、マッハの速度で真壁の頭をファイルでたたく。

真壁  痛い。

赤木  どうかしました?

白尾  どうかしました?

真壁  いえ。

赤木  白尾さん。ここがシャレコウベイダーの施設だって知ってた?

白尾  うん。

赤木  あれ?

真壁  白尾さんは快く受け入れてくれたんですよ。

赤木  なんで?

白尾  本当の悪は、この人たちじゃないって気がついたからよ。

赤木  本当の悪?

真壁  そう本当の悪。それは……。

赤木  ちょっと黙ってろ。白尾さん。本当の悪ってどういうことだ? 僕らは40年前

   にスカルブラッキーを倒してこの世界を平和に導いたはずだよ。

白尾  そうね。でも、それはまやかしだったのよ。

赤木  まやかし?

白尾  私たちの戦いは1年で終わった。そうよね?

赤木  ああ。

白尾  その後すぐに新しい戦士たちが悪の組織と戦っていたのを知ってる?

赤木  うん。僕らの変身ブレスレットが反応しなくなったせいだったよね。

白尾  そう。だから新しい戦士が選ばれたの。そう説明をされたわね。

赤木  それが?

白尾  それは嘘だったのよ。

赤木  嘘。

白尾  嘘。

赤木  嘘なの?

白尾  うん。そうやって40年間、いえ最初の戦士たちから数えて何十年もみんなを騙

   してきたの。

赤木  誰が? そんなことを?

白尾  それが本当の悪の存在を証明しているのよ。

赤木  本当の悪……。

真壁  そうです。そして、われらがシャレコウベイダーの総帥こそが!

赤木  うるさい。黙れ。

白尾  猛君。私たちと一緒にもう一度戦おう! 私たちが集まれば子供たちの未来が守

   れるのよ!

赤木  子供たちの未来。

白尾  そうよ。

赤木  本当の悪って何なんだ?

白尾  それは言えないわ。

真壁  私たちの仲間になれば教えてあげますよ。

白尾  猛君。

赤木  ……こんな遠まわしなやり方、気に入らないな。

白尾  え?

赤木  黒田だってそうさ。最初から力を貸して欲しいって言えば、俺は力を貸したさ! 

   何でこんなやり方をするんだよ!

真壁  えええええ? あんた断ったじゃん。

赤木  覚えてない!

真壁  ひどい。

赤木  俺は戦う。

白尾  猛君。

真壁  わかってくれたんですね。

赤木  ああ、わかった。

   白尾と真壁、拍手をする。

赤木  俺は、シャレコウベイダーと戦うぜ!

白尾  ええ?

真壁  何で?

白尾  猛君!

赤木  多分そのほうが恋が燃え上がると思うんだよね! うおー燃えて来た!

真壁  この人、本当に馬鹿なんだな。

   暗転。

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