フェイムルの移動図書館(2013) 第二場

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フェイムル移動図書館(2013) 第二場

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   ◆森の小道(暗転幕前)

   下手からリトが早足で出てくる。それを追ってマイオがやって来る。

リト   マイオ、早く早く!

マイオ  そんなに急いだって叔父さんの家は逃げていかないよ。

リト   違うわ。魔女に会って薬をもらうんでしょ。

マイオ  ああ、そうだったね。

リト   元気が無いわね。お母さんの病気がうつったの?

マイオ  うるさいな。黙って歩けよ。

リト   なによ。心配してあげてるのに。

マイオ  何も知らないくせに。

リト   知ってるわ。マイオと違って、本を沢山読んでいるもの。

マイオ  本が何だって言うんだよ! 沢山だって? 一冊しか持って無いくせに!

リト   何よ! マイオなんかその一冊も持ってないじゃない!

マイオ  うるさい! お前なんか本なんかいくら読んだって母さんは……。

リト   お母さんが何よ。

マイオ  ……なんでもない。急ぐぞ。

リト   やだ。帰る。

マイオ  わがまま言うなよ。

リト   みんなで嘘をついたのね。お母さんは死んじゃうのね?

マイオ  お医者さんが言ってただろ。黒い熱病の薬は家にはとても払えるお金は無いん

    だ。

リト   でも魔女なら薬を持ってるって言ってたわ。

マイオ  魔女なんかどこにいるんだよ。この森の中全部を探したって、そんなものはい

    ないんだよ。悲しいけど、これが現実なんだよ。

リト   じゃあ、帰ろう!

マイオ  ダメだ。

リト   マイオはいいの? お母さんが死んじゃって、もう会えなくてもいいの?

マイオ  お母さんの気持ちも考えろよ。リトが傷つくような言葉を聞かせたくないんだ。

リト   傷つかないもん!

マイオ  じゃあ、お前はそういう言葉を死ぬまで母さんに言わせたいのか?

リト   魔女を探しに行こう?

マイオ  え?

リト   魔女を見つけ出して、お母さんの薬をもらおう。

マイオ  魔女なんて、いるわけ無いよ。

リト   じゃあ、一人でも探しに行くわ!

マイオ  待てよ!

   上手にかけていくリト。あわててそれを追いかけるマイオ。

   暗転。

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