フェイムルの移動図書館 第3場

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フェイムル移動図書館 第3場

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第3場

マタタビ山のふもと(暗転幕前)

   一行は子猫たちを先頭にマタタビ山のふもとまでやって来る。

   マタタビ山には静けさが漂っている。

マイオ  何にもないね。

リト   うん。なんか雑草だけ。これがマタタビ

メルテル これは食べられない草です。猫も食べない雑草です。

リト   それくらいわかるわよ。

子猫たち 食べるよ!

リト   食べるの?

子猫たち うん!

マイオ  (あざ笑う)本当に役に立たない本なんだな。

メルテル 言ったな!

   怒ったメルテルがマイオを追い回が、華麗に避けられてしまう。

リト   でも、草だけじゃお腹が減らない?

子猫A  そうなんです。

子猫B  私たちの悲劇を聞いて下さい。

子猫C  ある日、魔女がやってきて。

子猫たち 私たちにこう言いました。

   マチョードの声が響く。

マチョード お前たちにこの世の幸せをやろう。何でも好きなものを望むだけお前たちに

    あげるよ。私は優しいから願いは三つかなえてあげる!

子猫A  大人たちは迷わずこう言いました。

子猫B  山のように魚が沢山欲しいと。

子猫C  そうして山には魚が降り注ぎ、

子猫D  みんながお腹いっぱい。

子猫A  全部食べきれぬままに魚は腐りだして、

子猫B  みんながお腹を壊したんだ。

子猫C  これはたまらんと大人たちは言いました。

子猫D  言いました。

子猫A  大人たちは魔女にこう言いました。

子猫B  山のようなネズミが欲しいと。

子猫C  そうしたら、今度は山のように大きなネズミが現れて、

子猫D  あべこべに僕らを追い掛け回したの。

子猫A  魔女は笑ってそれを見てるだけ。

子猫B  大人たちは必死で逃げてお願いをしたんだ。

子猫C  魚もネズミもこりごりだ。

子猫D  こりゴリラ。

子猫A  大人たちは迷わずこう言いました。

子猫B  山のようなマタタビが欲しいと。

子猫C  そうして山には、マタタビだけが生えるようになって。

子猫D  お魚もネズミもいなくなっちゃった。

子猫A  魔女は笑って言いました。

子猫B  金のタマネギがある限り。

子猫C  お前たちの幸せは続くだろうと。

子猫D  だろうと。

子猫A  困った大人たちは、山を登り金のタマネギを取りに行こうとしましたが、

子猫B  マタタビの誘惑に負けて、誰一人たどり着いたものはいません。

子猫D  いません。

子猫C  そこで私たちの代わりに。

子猫B  食べ物を取って来て下さい。

子猫D  ください。

子猫A  話の腰を折るなよ。

子猫B  だってお腹が空いたんだもん。

子猫D  空いたんだもん。

子猫C  さっき食べただろ?

リト   お兄ちゃん、金のタマネギですって。

マイオ  タマネギ? シチューにでもして食べろってことかな?

子猫たち タマネギなんか食べたら死んじゃうよ!

リト   そうなの?

子猫C  うん。僕たちには毒なんだ。

子猫A  もし、金のタマネギを取ってきてくれたら、お礼にそれを上げるよ。

マイオ  金のタマネギを?

子猫B  うん。

子猫C  いいよな?

子猫D  いいよ。

子猫B  山になきゃいいんだもん。

子猫A  僕らにはいらないものだもん。

メルテル そんなものをお礼に貰っても嬉しくないけどね。

子猫A  やってくれるの?

マイオ  うん、いいよ。

子猫B  本当に?

子猫C  どうしてそんなに親切なの?

子猫D  タマネギ好きなの?

リト   私たち、欲望を集めることになったのよ。

子猫D  なんで?

リト   お母さんの病気を治すためよ。

マイオ  東の魔女がこの羽根に欲望を閉じ込めてこいって。そうしたら魔女の目と鼻と

    口を取り戻せるから、そのお礼に薬をもらうのさ。

子猫A  魔女!

子猫B  魔女!

子猫C  また魔女か!

リト   東の魔女はいい人よ。

メルテル そうでもないけど。

子猫A  魔女に良いも悪いもあるもんかい。

子猫D  あるもんかい。

子猫B  だけどタマネギが無くなれば僕たちはそれでいいや。

子猫C  それはそれでいいや。

子猫A  そうそう。タマネギをあげるから、さっさとどうにかしておくれよ。

リト   分かったわ。

マイオ  ところで、どれがマタタビなの?

メルテル 僕が教えてやるよ!

   メルテルは山の麓からマタタビを抜いて持ってくる。

メルテル これですよ。

   子猫たちが一斉にメルテルの下に集まってきてメロメロになってしまう。

子猫たち うにゃーん。

マイオ  これがマタタビ? なんでこんな草が好きなんだ?

メルテル ふふ。そんなことも知らないのか?

マイオ  む。さっさと教えろよ。

リト   そんな言い方ダメよ。教えて頂戴。

   メルテル、力の限り威張ってみるが沈黙。

メルテル ごめんなさい。知りません。

マイオ  やっぱり役に立たない本だ!

メルテル 覚えてろよ!

リト   帰ったらお父さんとお母さんに聞いてみましょう。

子猫たち だから僕たちはこれ以上進めないんだ~。うにゃーん。

マイオ  じゃあ、すぐに戻ってくるから。

リト   待っててね。

子猫たち いってらっしゃーい。うにゃーん。

   マイオたちがマタタビ山の奥(上手)に向かっていく。

   子猫たちがそれを見送る。でも、マタタビに気をとられて気もそぞろ。

歌『勇気がなくちゃつまらない』

「勇気がなくちゃつまらない

 意地を張ってる人生なんて

 カツオ節のないご飯みたい

 味気の無いご飯みたい

 なんにもないご飯みたい

 ご飯の無いご飯みたい

 自分に出来ないことは

 無理せず素直に頭を下げてお願いします

 この借りは自分で出来ることで返せばいい

 運命なんて蹴飛ばして

 嘘っぱちの不幸を笑っちゃおう

 運命なんて蹴飛ばして

 楽しい毎日送りましょ!」

子猫A  人間たちうまくやるかな?

子猫B  僕たちは一歩も近づけないし。

子猫C  待つしかないよ。

子猫D  待つしかないよ。

   突然、辺りが暗くなり魔女マチョードがやって来る。

マチョード いないね? いないね? 見えないね! 犬が大嫌いな私は、あの声を聞く

     だけでも寒気が起こる。だから代わりに猫をいじめるのさ~。

子猫A  魔女だ。

子猫B  魔女だ。

子猫たち 魔女だ。

マチョード うるさいわね!

子猫C  僕たちの声の方が小さいのに。

マチョード さて、今日は何して遊ぼうかしら?

子猫A  何も。

子猫B  特に。

子猫C  遠慮します。

子猫たち お断りします。

マチョード そうだ!お前たちの一人をネズミに変えてしまおうか。

子猫A  やめてよ!

子猫B  食べられちゃう!

子猫C  食べられちゃう!

子猫D  食べられちゃう!

   逃げ回る子猫たちをマチョードは大きな声で笑いながら追い回します。

歌『魔女の歌』

「あいつが憎くて仕方がない

 あいつが怖くて仕方がない

 声を聞くだけでふつふつと 心の底に沸き上がる

 怒りと恐怖に震えるの

 だけど

 何も出来無い

 何も出来無い

 何も出来無い

 だから変わりにこいつらを 虐めて虐めて紛らわす

 あいつが憎くて仕方がない

 あいつが怖くて仕方がない」

マチョード さぁ、どいつをネズミにしようかね!

   歩きながら子猫を追うマチョードは手に握った杖を振り回しました。

   子猫下手に逃げ出していく。暗転。

マタタビ

   ところ変わってマタタビ山。数匹の猫が、ゴロゴロしている。どの猫もやせ衰えて

   いる。そこに(上手より)兄妹とメルテルがやってくる。

   山の上に金のタマネギの芽が出ている。

マイオ  山って言うか、ちょっと丘だね。

リト   どうしてタマネギを拾えなかったのかしら?

マイオ  マタタビってすごいんだね。

   リトは猫に声をかけます。猫たちは面倒くさそうに返事をします。

リト   大丈夫?

猫1   ほっといてくれよぉ。今幸せなんだから。

マイオ  子猫たちがお腹を空かせてるよ。

猫2   ここにいればそんなこと気にならないさ。あぁ~、幸せ。

メルテル だらしのないやつらだなぁ。あ! あんなところに。

   メルテルがタマネギを指差す。

リト   金のタマネギだわ。

マイオ  よし拾ってこよう!

   マイオ、金のタマネギに近づくが目を押さえてかけ戻ってくる。

リト   どうしたの?

マイオ  わかんない。

リト   何言ってるのよ。

   リトが今度は金のタマネギに向かっていく。

   マイオと同じように目を押さえて戻ってくると、マイオを叩く。

リト   知ってて行かせたでしょ?

マイオ  ばれた?

メルテル どうしたの?

リト   目にしみるのよ!

マイオ  あのタマネギから何か出てるんだ!

   メルテル、タマネギに近づく。何も起こらない。

メルテル なんともないよ?

マイオ  え?

リト   すごいわ!

メルテル すごい? すごいだって?

リト   うん、あなたすごいわ!

メルテル 僕は、役に立ったんだ! やったよ! 僕は役に立たない本じゃ……、

マイオ  早く引き抜いて戻って来いよ! 涙が止まんないよ!

メルテル 嫌な奴。

   メルテルは金のタマネギを抜いて戻ってくる。目を押さえるマイオとメルテル。

リト   またしみてきた。

マイオ  もうちょっと離れてろよ。

メルテル ふん。

リト   そんなことより猫たちが心配よ。

マイオ  マタタビをどうにかしないとね。

リト   なんだかちっとも幸せそうには見えないわ。

マイオ  本当だね。なんだか怖くなってきたよ。

メルテル ほら、もう行こうよ。

マイオ  だけど放っておけないだろう。

メルテル 悪いのはこいつらなんだ。楽しみだけを求めたから、こうなったんだ。自業自

    得さ。

リト   でも、このままにしておいたら死んじゃうわ。

マイオ  そうだよ。

メルテル 幸せだって言ってるんだから、いいじゃないか。

マイオ  君、冷たいね。

リト   少しは助けたいって思わないの?

メルテル 思わないね。人を助けてばかりいたら、自分が救われないもの。

リト   お母さんはいつも言ってるわ。人を助けたら、自分もいつかその人に助けても

    らえるだろうって。

メルテル 生憎、そいつらは猫だからね。人じゃありませんよ。

マイオ  君は本だしね。

メルテル そう。僕は本さ。だからタマネギも目にしみないんだ。

リト   まだすねてるの?

メルテル べつにー。

リト   マイオ、謝ってよ。

マイオ  えー。

リト   はやく。

マイオ  わかったよ。(棒読み)君がいなかったら、タマネギが拾えなかったよ。そうし

    たら僕たちはとても困ったでしょう。どうもありがとう。

リト   そうよね。あなたとてもすごい本よ!

   メルテルの機嫌が少し良くなる。

メルテル そう? ……うん。僕も実はちょっと可愛そうだって思ってたんだよね。とり

    あえずふもとまで運んであげようか。

リト   そうこなくっちゃ。

マイオ  調子の良い奴。

リト   お兄ちゃん!

マイオ  はいはい。

マタタビ山のふもと(暗転幕前)

   再びマタタビ山のふもと。

   マチョードが子猫たちを整列させて号令をかける。

マチョード 番号!

子猫A  チュウ。

子猫B  チュウ。

子猫C  チュウ。

子猫D  ショウ。

マチョード あーっはっはっは!

   マチョードはお腹を抱えて笑い転げて子猫たちをいじめて楽しんでいる。

   そこへ兄妹が戻ってくる。

マイオ  タマネギ取って来たよ!

リト   全然大変じゃなかったわよ。

メルテル まあ、僕がいなきゃ無理だったけどね。

   マチョードは3人を見て首をかしげる

マチョード それはあたしのタマネギじゃないかい。誰だい、お前たちは?

マイオ  こいつの兄です。

リト   これの妹です。

メルテル 本です。

マイオ  あなたは?

マチョード 四人姉妹の魔女の長女マチョードさ。

マイオ  魔女の長女で魔長女だって。

リト   変な名前ね。

マチョード マチョード! あんた私をバカにしたね? 雑巾にして破れるまでこき使っ

    てやろうかしら。

メルテル お前が北の魔女か! ここは僕に任せてくれ! 華麗に片をつけてやるよ!

マチョード うるさい奴、そこで丸くなってな!

   メルテル、魔法にかけられ手足を抱えて丸くなり地面に転がされてしまう。

メルテル ごろごろごろ。

マイオ  長女の弱みは何だっけ?

リト   たしか犬よ。犬が嫌いだって。

マイオ  こんなところに犬なんていないよ。

子猫A  猫ならいるチュウ。

子猫B  猫ならいるチュウ。

子猫C  猫ならいるチュウ。

子猫D  猫ならいるショウ。

リト   そうよ! 声を聞いたら魔法を忘れちゃうって言ってたわ。

マイオ  そうか。

マチョード 何をこそこそ話してるんだい! それ、雑巾に……。

   マチョードは杖を振りかざして兄妹に魔法をかけようとする。

マイオ  ようし(犬の鳴きマネ)。

子猫A  犬だチュウ。

子猫B  犬だチュウ。

子猫C  犬だチュウ。

子猫D  犬だショウ。

マチョード 犬だって? 目で確認するのをすっかり忘れてたわ!

リト   いけない! 見られたら大変だわ!

   リト、金のタマネギを見る。

リト   これだわ! しみるけどちょっとのガマンよ!

   リト、険しい顔で金のタマネギをマチョードにぶつける。

マチョード あぁ、目がしみる! 犬も来る! 見えない! 嫌ぁ! 嫌ぁ!

   その場にへたり込むマチョード。顔を伏せてうずくまってしまう。

リト   さあ、東の魔女さんの目を返して。

マチョード 犬を、犬を向こうにやって頂戴。そうしたらなんでもあげるわよ。

リト   目を返すほうが先よ。

マチョード 犬なんて見たくもないよ。

マイオ  困ったワン。

リト   わかったわ。でも嘘をついたらすぐに犬が来るわよ。

マチョード わかった。わかったわよ。タマネギも向こうにやって頂戴。

リト   いいわよ。

   リトは金のタマネギを見ないようにして遠くへ追いやる。

   マチョードは顔を上げて目にハンカチを当てながら辺りを見回す。

   犬がいないことがわかると、大威張り。

マチョード 犬はいないね? さぁ、お前たちを雑巾にして……、

   リトが子猫たちに合図を送る。すると、子猫たちは犬の鳴き声を真似する。

子猫A  ワンだチュウ。

子猫B  ワンだチュウ。

子猫C  ワンだチュウ。

子猫D  ワンだショウ。

マチョード いやああああ、変な犬!

   再びマチョードは頭を抱えて丸くなってしまいます。

リト   約束は守りなさい!

マチョード わかったわ。好きにとればいいわ。アデリンの目はこの手の中よ。

   マチョードは手をだす。それに無造作に触ろうとするマイオ、リトがあわてて声を

   かける。

リト   お兄ちゃん!羽根、羽根!

マイオ  あぁ、そうか。

   マイオは羽を取り出してマチョードの手を羽根でなぞる。マチョードの手が開き目

   玉が二つ転がり落ちる。同じようにマチョードもその場に倒れこむ。

   すると子猫とメルテルにかけられていた魔法が解けたのでした。

子猫A  魔女が死んだ!

子猫B  魔女が死んだ!

子猫C  魔女が死んだ!

子猫D  魔女が死んだ!

マイオ  どうしようか、これ。

   マイオは欲望を吸った羽根を持ってうろうろする。

リト   本に挟まないと。

マイオ  本なんて持ってないよ!

   兄妹、メルテルを見る。

メルテル え?

リト   お願い!

メルテル ええ?

マイオ  頼む!

メルテル えええ?

兄妹   さすが役に立つ本だね!

メルテル 任せてくれ!

   マイオ、メルテルに羽根を渡す。今度は落ちているアデリンの目玉をつまむ。

マイオ  目玉なんて気味が悪いや。

リト   ほんとね。

メルテル 残るは鼻と口だね。

マチョード お待ち!

   マチョードがよろよろと起き上がると、猫たちパニックに陥る。

子猫A  魔女が生き返った!

子猫B  魔女が生き返った!

子猫C  魔女が生き返った!

子猫D  魔女が生き返った!

マチョード うるさいわね!

子猫たち キャー。

マチョード お待ちなさい。

リト   なあに?

マチョード その目には、欲望が詰まっているのよ。

マイオ  知ってるよ。だから羽根で吸い取ったんじゃないか。

マチョード 羽根? それをどうするつもり?

マイオ  東の魔女に返すんだ。

マチョード 何だって? 妹は元に戻ったのかい?

リト   前がどんなだったかは知らないわ。

マイオ  顔がなかったから元には戻ってないよね。

メルテル アデリン様は、心を入れ替えてこの兄妹の手助けをしています。

マチョード 妹は、それをどうするって? こんな変な見張りまでつけて。

メルテル 変なとは何だ。

マイオ  姉と妹たちが欲望に取り付かれたから、それを取り返してくれって。

マチョード 欲望! そうさ、私も欲望に負けた。最初は妹アデリンを助けようとしてい

   たんだけどね。気がつけばここで猫たちをいじめていたわ。

リト   じゃあ、謝りなさいよ。

子猫たち え?

   急なことで驚く子猫たち。

   落ち着かない様子でみんなで仲間の背中に隠れようとクルクル回り続ける。

マチョード そうだね。お前たち、今までひどいことをしてすまなかったね。

   子猫たちまだ怖くて近づけないままでいる。

マチョード 私はしばらくここに残って、ここを元通りにするよ。

子猫たち 本当?

マイオ  それがいいね。

リト   うん。嘘をついたら、犬の鳴きマネをしてあげればいいわ。

マチョード それは勘弁して頂戴。嘘でも背筋に悪寒が走るわ。

子猫A  もう行っちゃうの?

子猫BC もう行っちゃうの?

子猫D  行っちゃうの?

リト   うん。急がないとお母さんが大変なの。

子猫たち またね。

マチョード 私もここを元通りにしたら、妹のところに行くわ。

リト   東の魔女のところに?

マチョード ああ、そうさ。そうだ。目をそのまま持っていくなんて気味が悪いだろう? 

    この袋に入れてお行き。

   マチョードは懐から袋を取り出す。マイオはそれを受け取ると目玉を中に放り込む。

マチョード 次女のミヒナはお酒が大好きだから、沢山飲ませて眠らせてしまいなさい。

    その間に鼻を取ればいいでしょう。

マイオ  分かった。ありがとう。

リト   じゃあね。バイバイ。

   子猫と魔女に見送られて去っていく一行。

   兄妹たちが見えなくなってしまうとマチョードが子猫たちに向かって笑う。

マチョード さあ、誰をネズミにしてやろうかしら?

子猫たち キャー。

   子猫たち震え上がる。それを見てマチョードはからからと大笑いをする。

マチョード あははは。冗談よ。

   子猫たち顔を見合わせて、

子猫たち せーの、ワン!

   今度はマチョードは震え上がる。

   笑い声を上げる子猫たちに向かってマチョードは、大きな声で怒鳴り散らす。

マチョード 今度やったら、本当にネズミに変えちまうからね!

子猫たち キャー。

   子猫たちはまたも震え上がる。

   暗転。

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